体験の場

ひきこもり問題について語るとき、県立山の学校の名前をとり挙げてくださる方がおられます。山の学校イコールひきこもり対策施設ではありません。が、たしかに、ひきこもりに近い状態であった少年が1年間元気に山で寮生活を送れた、というケースはあります。
厚生労働省の定義をもとに、ごく簡単にいえば、ひきこもりとは6ヵ月以上他人と交わることを避けている現象のこと。統合失調症精神分裂病)やうつ病強迫性障害のような単一の疾患や障害による現象はあてはまりません。不登校にかんしては、文部省の基本調査のなかで、何らかの要因・背景により登校しないあるいはしたくともできない状況にあるため、年間30日以上欠席した者で、病気や経済的な理由による者を除いたもの、とされています。
小・中学校時代に不登校であった者。在籍する高校で不登校や休学の状態にある者。高校を中退した者。あるいは中学校や高校を卒業したあと進路を決められないまま在宅している者。このような状態・現象の理由として、いじめもあれば、うつもあれば、補導もあれば、基本的生活習慣(睡眠や食事など)の乱れもあるでしょう。さらにその根本原因となれば家庭環境を含め千差万別と思われます。
山の学校の目的は二つ。林業後継者の育成と青少年の健全育成です。ただ、経済の停滞、国産林業の不振といった社会全体の課題の余波を受け、ここ数年、林業の柱は揺らいでいます。残るは青少年の健全育成。道に迷っている少年たちができるだけ短期間で自分の進路を見いだせるよう、体験の場を提供すること。広い意味での自立支援こそ現代的使命といえるかもしれません。